残業しないで帰りなさい!

甘い瞳をじっと見上げる。

「異動してから日曜日しか会えなくなっちゃったじゃない?電話で話しても、やっぱり会いたくて寂しくてたまらなかった。その割にラインとかメールとかマメにしないから、今日はこんな思いをさせちゃったし。だからね、香奈ちゃん。うちに来て一緒に暮らそう?」

一緒に暮らすなんて、私はすごく嬉しいけど、いいのかな?

「えっと、迷惑じゃない?」

「そんなわけないじゃない。そもそも俺がお願いしてんだよ?……ただ、ね」

ただ?
なんか条件があったりして?

「一緒に住むからには、半端なことはしたくないんだ」

半端なこと?
どういう意味だかさっぱり分からない。

翔太くんは私の両手をギュッと握って真面目な顔をした。

「香奈ちゃん」

「……はい?」

私が首を傾げると、翔太くんは大きく息を吸った。

「俺と結婚してください」

一瞬、周りの音が消えて、時間が止まった。
目を大きく開く。
息ができない。

「君のことを大事にします。だから俺と結婚して、一生そばにいてください」

翔太くんの真剣な瞳に吸い込まれる。

半端にしたくないって、そういう意味……?

……すごく、すごく嬉しい。
まばたきもできない瞳から涙がこぼれ落ちる。

翔太くんはいつだって私のことを大事にしてくれてるよ?
私、あなたのそばにいたい。ずっと翔太くんのそばにいたい。

答えなんか、決まってる!
翔太くんを見上げてじっと見つめる。
甘い甘い、でも少し不安げな瞳。
だから、大きくうなずいた。

「はい」

「はあっ、よかった……」

翔太くんは本当に安堵したように笑って、私をもう一度ぎゅうっと強く抱き締めた。

嬉しい。
ずっとあなたのそばにいられる。
いろんなあなたをそばで見ていられる。
いろんな時間を共有できる。

嬉しくてたまらなくて、私もぎゅうっとしがみ付いた。

「一緒にいよう。ずっとずっと」

「うん、一緒にいる。ずっとずっと」

翔太くんは私を少し離して見つめた。
私もじっと翔太くんを見つめた。

翔太くんがフッと笑った。
……なんで笑うの?

「告白はファミレスで、プロポーズはマンションの下なんて、どっちもかっこ悪いなあ、俺」

そんなことないよ?
かっこ悪くなんかない。どっちもあなたの気持ちが痛いほど伝わってきた。

「私はそういう翔太くんが好きなの」

「そうなの?」

「そう!」

顔を見合わせて二人でふふっと笑った。
この柔らかい空気が大好き。ずっと包まれていたい。
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