残業しないで帰りなさい!
翔太くんはそのまま私にキスをしようとしたけれど、ここはマンションの下で、それなりに人通りもあったりして、こんなにいちゃいちゃしている時点で結構注目を浴びているわけで。
いったんじっと考えてから、さすがにキスはやめた。
それもなんだかおかしくて、二人でクスクスと笑った。
そのまま手を繋いで翔太くんの家に行くと、びっくりするほど賑やかで圧倒された。
何人いるの?7人?8人?みんなちょっと酔っぱらっていて、なんか学生のノリみたい。
それでも、翔太くんが私を連れてリビングに入ると、みんな突然シーンとしてバッとこっちを向いたから、その静けさにまた怖気づいた。
翔太くんは、後ろから私の肩に手を置いた。
「俺の婚約者」
「!」
いきなりそんな紹介……、とっても照れてしまいます。
それに、紹介した時の翔太くんの声にも若干の照れを感じて、ますます頬が熱くなった。
オーッ!歓声があがる。
……こ、これは近所迷惑では?
みんな声を揃えて頭を下げた。
「おなしゃーっす」
大きい、声が大きい……。そして揃っている。
これは「お願いします」と言っているの?
「ありがとうございます」が「あざーす」になるのと同じようなことだろうか?
だから私も「お願いします」と言ってぺこりと頭を下げた。
なんかなんか、営業さんって体育会系のノリなんですね?
でも翔太くん、体育会系じゃなくて吹部だったよね?
よくこのノリの中でお仕事してるなあ。
そんな風に感心していたら、さっきの可愛い女性が近付いてきたから、ぺこりと頭を下げた。
「さっきはすみませんでした」
「ううん。でも、あんな風に必死に追いかけられるなんて、羨ましいなあ。課長、やるじゃないッスか!」
この可愛い人も体育会系!?
「まあね」
翔太くんはニヤッと笑ってそんなことを言ったけれど、私は嬉しいやら恥ずかしいやら。おろおろしちゃいます。
「藤崎ーっ、俺にも嫁さん、紹介しろよ!」
ソファーからそう言ったのはかなり恰幅のいいオジサンだった。