残業しないで帰りなさい!
白石さんは「じゃあねー」と元気に手を振って会議室から出て行った。
5時かあ。8時になったらあの神経質な大塚係長が来ちゃうかもしれない。
まだまだ終わりは見えないけど、なんとかあと3時間で終わらせないと。……絶対終わらないけど。
とにかく頑張ろう!
先にサンプルを作って、その後で資料と組み合わせて袋に入れた方が要領がいいかな。
座って手だけを右から順に動かして、サンプルを重ねてまとめる作業をひたすら繰り返す。
こんな簡単な作業なのに、どうして昨日はうまく教えられなかったのかな……。
やっぱり金子さんのそばで一緒に作業していた方が良かったのかな。
私が離れたりしちゃったから……。
はあ……。
単純作業でいつもみたいに無になりたいのに、どういうわけか昨日のことを思い出してしまう。
思い出したくないのに。
ああすれば良かった、こうすれば良かったっていちいち後悔して。
ああもう!
ダメダメ、思い出さない!
過ぎたことを考えてもしょうがない。
それはわかってるんだけど、すぐまた考えてしまう。昨日の流れを最初から思い出して、どこがいけなかったのかを考えて。
あの状況を防ぐためには、やっぱり金子さんのそばを離れるべきじゃなかった。
そう思った時、扉をコンコンッとノックする音が響いた。