残業しないで帰りなさい!
なんかなんか、ドキドキしてしまった……。
大塚係長だったら罵倒されてただろうな。
藤崎課長は怒らないんじゃないかって、なんとなく思ってはいたけど、まさか手伝うなんて。そんなことしてもらって、いいのかな。
それにさっきの笑顔、ちょっと癒されちゃった。またここに戻ってきて手伝ってもらえるなんて、なんか嬉しいな。
でも、手伝ってもらえるとはいえ、そんなに頼っちゃダメだよね。
さてさて!頑張ろう!
気合いを入れてサンプルを組む作業を終わらせた頃、またノックが聞こえて藤崎課長が会議室に入ってきた。
一人で広く感じていた会議室に藤崎課長が入ってきたら、急に密度が増して部屋が狭くなったような気がした。背が高いから?
それに藤崎課長、さっき来てからまだ15分しか経ってないけど、もう見回り終わったのかな?
「懐かしいなあ。俺も昔やってたけど、この作業、変わんないねえ」
藤崎課長はサンプルを手に取って微笑んだ。
「そうなんですか?」
「うん。まあサンプル配んのは基本だからね」
「はあ」
「じゃあ、俺はサンプルと資料を組んで袋に入れればいいかな?」
藤崎課長は椅子を引いて座るとサンプルを自分の前にかき集めた。
目の前に藤崎課長……。
じっと直視はできないけど、チラッと盗み見た黒いサラサラの髪と整った顔立ち、やっぱり王子様っぽいなあ。