残業しないで帰りなさい!
正面をチラッと見ると、藤崎課長は頬杖をついて目を細めていた。怒ってるのかな?
「全然話が見えない」
「す、すみません。私の説明が下手だから」
「いや、そうじゃなくってさ。アルバイトと一緒に作業をして様子も確認していたんでしょ?それに、アルバイトに単純作業をしてもらうのは社員が自分の担当する仕事をするためなんだから、君が見本を渡して自分の仕事に戻ったことは何も問題はないと思うんだよね」
「……」
それは正論なんだけど、実際にはそううまくいかなかったわけで。
「でも、アルバイトさんに『ちゃんと教えてもらえなかった』って言われてしまって」
「そのバイトさんはそう言って辞めちゃったの?」
「そうですね」
「ふーん」
呆れてしまいますよね?ホント、自信なくなっちゃうな。
「正直、この程度の作業もまともにできないようなアルバイトなら辞めても良かったんじゃないのかな。そんなの、先が見えてるよ」
あれ?
ちょっと予想外の回答。
「まあ、現段階では君サイドの話しか聞いていないけど。でも、君は悪くないと思うよ。そんなに自分を責めないで」
藤崎課長はふんわり笑った。
またそんな「君は悪くない」なんて。「自分を責めないで」なんて……。そんな優しい言葉、優しい微笑み、胸に刺さる。
どうしよう。
少し鼻が痛くなって涙が出そうになったから、作業の手を止めずにうつむいて瞬きをした。
もしかして私の味方になってくれてるのかな?
昨日、高野係長に「いい気になってたんじゃない?」なんて言われて本当はすごくショックだった。だから、「悪くない」って言ってほしかったのかもしれない。
そんな心の弱った私に、藤崎課長の言葉はあまりにも望み通りで、報われたような、深く癒されたような、なんだか不思議な感覚に包まれているような気がした。