残業しないで帰りなさい!
そんなにじっと見て、なんでしょうか?
ドキドキするからやめてほしい。ますます緊張して追い込まれている気持ちになる。
目が泳いでいないかな、私。
「オムライス、好きなの?」
……は?
じっと見てると思ったら、なにその質問?
……拍子抜けしちゃうなあ。
「まあ、それなりに好きですけど」
「俺、オムライス大好きなんだけどさ、いつもうまく作れないんだよねえ。きれいに包めないんだよ」
突然何の話かよくわからないけど、オムライスを作る時、上手に卵で包めない悩みは、まあ、わからないでもない。
でも、藤崎課長がオムライスを作っている姿はちょっと想像できないなあ。
「ご自分で作るんですか?」
「滅多に作んないけどね。失敗すんのわかってるから」
「やっぱり奥様に作ってもらった方が美味しいですよね」
「……」
藤崎課長は目を細めて腕組みをすると、ソファーにドサッと背中を預けて黙ってしまった。
あれ?いきなり不機嫌になった?
もしかして私、変なことを言っちゃった?奥様の話なんてしちゃいけなかったのかな?
まさか、別居中?それとも離婚したとか!?
「す、すみません!変なこと言って」
「ホントだよ、変なこと言わないでくんない」
藤崎課長のすごく不機嫌な顔に驚いて、小さくなってうつむいた。
「すみません……」
「あのね、俺、独身だよ?結婚したこともないし」
あれっ?……そう、なんだ。