残業しないで帰りなさい!
そんな、こと、初めて言われた……。
ホントやめてほしい。どういうつもり?
……きっと、冗談のつもりなんだろうな。
でも、冗談だとしても、私みたいなのじゃなくてもっと女の子らしい可愛い子に言うべきだと思う。
「あれ?不機嫌になっちゃった?」
瞬きをする藤崎課長。そう言っておけば、女は誰でも喜ぶとでも思ったんだろうか。
さっきの『初めての男』発言も不快だったから、それも含めて思いきって一言、言っておこうかな。
「……セクハラです」
「えっ!」
藤崎課長は驚いた顔をして、その後落ち込んだ顔をした。
「そっか。……ごめん」
藤崎課長は顔をそむけてそう言ったけど、そんな落ち込んだ感じで謝られると、こっちが悪いことをしたような気がしてしまう。
上司の軽い冗談も受け流せない部下で、なんかすみません。
私がうつむいていると、藤崎課長は頬杖をついてじっと私を見た。
「いや、やっぱ撤回」
「え?」
「やっぱり、謝んない。本当のことだから」
「……」
本当のことだからって何?意味がわかんない。困惑するから、ホントにやめて……。
でも、藤崎課長の話は困惑する私の思いとは全然違う、おかしな方向へ進んだ。
「それをセクハラって言うなら、俺を『王子』って呼ぶのもセクハラだと思うんだよねっ!」
「……は?」
なぜ急に王子の話題?
「こんな年で『王子』なんて言われんの、ホントにイヤなんだよ」
「……若い時は良かったんですか?」
「そう言う意味じゃない!若い時もイヤでした!」
「はあ……」
なにを急に怒ってるんだろう。