残業しないで帰りなさい!
私は体育会系の部活に所属していたことは一度もない。でも、背が高いだけでバスケとかバレーの経験者だと勘違いされることは多かった。
勘違いされるのは好きじゃなかったけど、スポーツをやったことがないからって恥ずかしいとは思わないけどなあ。
もしかして、課長が恥ずかしいと思うのは王子様の重圧のせい?王子様ならスポーツやってて当然って期待されちゃうから?
なんかなんか、大変ですね?
「私も体育会系の部活に入ったことはありませんよ」
「あ、そーなの?じゃあ一緒だね。俺、ずっと吹奏楽部だったからさ。スポーツする側じゃなくて応援する側だったんだ」
「えっ!」
驚いて、思わず絶句してしまった。
「私も、吹部でした……」
「ええ!?ホントに?すごいな、一緒だ!偶然の一致!」
藤崎課長は子どもみたいにはしゃいで見えた。さっきの大人はどこへ行った?
「『吹部』って言い方も懐かしいなあ。楽器は何やってたの?」
「……ユーフォです」
私は楽器を選べなかった。本当はクラリネットとかフルートに憧れてたんだけど、体が大きいから大きい楽器をやってって、押し付けられた感じだった。さすがにチューバは男子がやってたけど。
「へえ?ユーフォニウム?俺はトロンボーンだったんだ。手が長いからやれって感じで言われてさ」
「私がユーフォやったのと同じような理由ですね」
「そうなの?でも、やってみたらけっこう面白かったよ」
藤崎課長はにっこり笑った。
確かに、私もやってみたらユーフォは楽しかった。