残業しないで帰りなさい!

「さすがに冬場は寒くて屋上には行かなかったけどね」

「楽器は温度変化に敏感ですからね」

「あー、そうだったかも。楽器が冷えないように気を付けてた気がする」

藤崎課長、にこにこ笑って楽しそう。

部活の話なんてするの、本当に久しぶり。でも、何年も前のことのはずなのに、昨日のことみたいに話してる。

なんかなんか、すごく楽しい。

藤崎課長って立場も歳もずっと上の人なんだよね?それなのに、全然そんなの感じない。まるで一緒に高校生活を送っていた同級生みたい。

なんだろう、この感じ。
共通の話題だから?

そういえば藤崎課長って、王子様な見た目と違ってすごくお喋りなのかもしれない。

私、普段はこんなにお喋りじゃないんだけど。お喋りな藤崎課長につられてたくさん喋っちゃってる気がする。

男の人と二人で食事に行くなんてって、あんなに緊張していたのが嘘みたい。私、考え過ぎ、構え過ぎだったのかな。

ウエイトレスさんが食後の飲み物を持ってきたから、カチャカチャとテーブルに並べる様子をじっと見ていた。

「嫌いなの?それ」

「え?」

藤崎課長は突然、私のサラダの皿に残ったセロリを指さした。

実は私はセロリが苦手。

あまり入っていることはないのに、このファミレスのサラダにはご丁寧に生のセロリが入っていた。だから残していたんだけど……。

「じゃあ、食べてあげる」

「え?あっ……」
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