残業しないで帰りなさい!
本当にビックリした……。
一瞬、心臓が跳ね上がって息が止まった。何度も大きく息をして、手で胸を押さえてもまだ激しい動悸が止まらない。
こんなの心臓に悪いよ。
「なあに?そんなにじろじろ見て」
藤崎課長は両目を開けると膝に肘を乗せて頬杖をついた。それは、いつものやる気のない顔ですね?
「……寝てたんじゃないんですか?」
「寝てないよ」
「エー?嘘ですよ。完全に寝てましたよね?たった今起きたんですよね?」
「そこまで言うなら、そういうことにしてもいいけど。それは君の思い込みだから」
なにそれ?
なぜ寝ていたことを認めたくないの?
だいたい、なんでこんな所で寝てたんだろう。
「こんな所で何してるんですか?」
「サボってる」
ええ、そうでしょうね、そうでしょうとも!
ここで煙草吸ってサボって寝ていたと。そういうことですよね?
「そんなことは見ればわかりますよ」
「じゃあ何が知りたいの?」
え?何が知りたい?そう言われると、別に何が知りたいってわけでもない。
「別に、何ってわけでは……」
藤崎課長は少しうつむいた。
「……いいよ、教えてあげる。俺がここで、何してたのか」
「?」
サボっていたのでは?
「……」
「……?」
藤崎課長は瞳を斜め下にそらして、小さく息を吸った。
「……君のことを、……考えてたんだ」
少し不安げな揺れる瞳で囁くようにそう言うと、藤崎課長は顔をあげてまっすぐに私を見つめた。