残業しないで帰りなさい!
私、キュンとしたりするんだ……。
そんなこと、一生ないと思ってたのに。
でも、そんな風にキュンとする自分を感じたら、なぜか涙がわいてきた。
「……オッサン王子じゃ、ないもん」
「じゃあオッサン」
「……」
私が涙目になると、瑞穂は机を叩いて笑った。
「あはは、悪かったよ、ごめん!ちゃんと王子って呼んであげるから」
本当は課長のことをオッサンって言われたから涙目になったんじゃない。
私も……キュンとするんだってことに、涙がわいたんだ。
「ねえ……キュンとすると喉まで痛くなる?」
「それはアンタ、キュンとしすぎ!」
私、本当に課長にキュンとしてる……。すごくすごく、キュンとしてるんだ。
なんだろう、この感じ。……嬉しい?
キュンとして、私、嬉しいと思ってる?それはとても幸せなこと、なのかな。
でも、そう思った途端、足首に太くて重たい鎖がジャラジャラと音をたてて絡み付いた気がした。
両手で顔を覆う。
キュンとするなんて、なんか、そんなの、女の子だ……。
「なんか、私、女の子みたい……」
やっぱり罪悪感を感じる。
「香奈はずっと女の子だよ」
「うーん……」