残業しないで帰りなさい!

困った顔で瑞穂を見つめる。

「ねえ、キュンとしない方法なんて、ない?」

「はあ?ないよ!アンタ、ホントにバカだね。いいから、素直に恋に落ちなさい」

「恋ニ、落チル!?」

そんな台詞、私には一生関係ないと思ってた。ブンブン頭と手を振る。

「ムリムリムリムリ!絶対無理!私は一生恋を夢見るくらいでいいんだよ」

瑞穂はちょっと真剣な顔をした。

「香奈、しっかりしな!もう恋は始まってるんだよ」

「……」

そうなのかなあ。

「香奈、その王子のことは、怖くなかったんでしょ?」

「……うん」

そうなんだよなあ。
可愛い女の子って言われた時はちょっと怖かったけど、他の男の人に感じるような怖さは感じない。

「しかも自分から近付いてじろじろ見たわけでしょ?」

「……うーん」

そうなんだよねえ。
ついつい自分からそばに近寄って、じっくり観察してしてしまった。
本当のことを言うと、まだ観察し足りない。もっとよく観察したかったなあ。

「それはつまり!香奈にとってその王子は、他の男とは明らかに違うってことだよ」

他の人とは違う?そうなのかな……。
それはやっぱり『特別』ってこと、なのかな?

確かに、今までだったら男の人に近付こうなんて、考えもしなかった。男の人に興味なんて全然なかった。

それなのに課長には興味を持った。好奇心を持った。

……あれ?

そっか!
ただ単に好奇心を持った、見てみたくなった、知りたくなった、ただそれだけのことなんじゃない?別に恋とか関係なくて。
そういうことだよ!
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