残業しないで帰りなさい!
「ねえ、瑞穂!違うよ!これは恋じゃないよ!ただ単に知りたいと思って、好奇心を持っただけなんだよ!」
問題が解けた子どもみたいに勢いよく無邪気に言ったのに、瑞穂はジトッとすわった目で睨んだ。
「だーかーらーっ!それが恋の始まりなんだっつーの!」
「ええー?……そうなの?」
「そーだよ!好奇心を持ったり、知りたいって思うのは、その人のことが好きだからなんじゃない?だって、好きでもない人のことを知りたいなんて思わないでしょ?つまり、香奈はその王子のことが好きだから知りたいって思ったんだよ。いーい?もう香奈の恋は始まってるの!いい加減認めなさい!」
……課長のことが、好き?
私、課長のことが好き、なのかな?
好きだから、知りたいと思ったの?もっと近くで見たいと思ったの?もっと話が聞きたいと思ったの?
それを、恋って言うのかな?
でも、やっぱりちょっと怖い。私ってホントに臆病。始まった恋をやめる方法なんて、ないのかな?なんて思ったりして。
「恋をやめる方法なんて……」
「ないっ!」
瑞穂は私の言葉に思いっきりかぶせて言った。
「はあっ……、そんなの、困るよ」
「なんで困んのよ?恋をするなんて、すごーく素敵なことなんだよ?しかも、両思いだよ?」
両思い……?そんなの想像もつかない未知の世界だよ。
そんなこと考える余裕なんてない。今は自分のことで精一杯。
「私が恋だなんて、そんな、女の子みたいなこと……」
瑞穂は真顔になった。