残業しないで帰りなさい!
「……女の子でいられたら、いいなあ……」
自分で自分のつぶやきを聞いて、ふと気が付いた。
私、本当は女の子らしくしたいのかな?女の子らしくすることに憧れているのかもしれない。でも、男の人の目が怖いから、じっとその願望を抑えているんだ。
少し落ち込んだようにつぶやいた私を、瑞穂はじっと見ていた。
「よーし!じゃあ、こうしよう!」
瑞穂は何かを思い付いたように、ニイッと笑ってパンッと手を叩くとビシッと私を指さした。
「香奈!アンタ、全然女じゃないよ。ほんっと女捨ててる。私が保証するよ!」
「えっ?……うん」
どうしたのかな?急に。
「そんな香奈のことは誰が見ても、どんな男が見ても、女の子には全然見えない。その辺の木と一緒」
「はあ」
その辺の木、ですか?
私が困った顔をすると、瑞穂はまあまあ、となだめるように目を細めた。
「だけどね、その王子にだけは女の子に見えるの」
「えっ?」
「他の人の目には女の子に見えないけど、その王子にだけは、ちゃんと香奈が女の子の姿に見えてるの。だから、王子の前でだけは、香奈は普通に恋する女の子でいていいんだよ」
「……」
瑞穂は本当にいい友達だなあ。嬉しくてちょっと涙が出そう。
「どーよ、これ!いいでしょ!」
自慢げに胸を張る瑞穂。ホント、いい子だよ。