残業しないで帰りなさい!

王子様の前でだけ恋する女の子でいられるなんて、そんな素敵なシチュエーション、よく思い付くなあ。

「うん、……ありがと」

「どお?恋する女の子でいられそう?」

「んー……」

自分が恋をしてしまったことは、ちょっとずつ受け入れられつつある、と思う。

でも、課長の前でだけ女の子なんて、難しいなあ。まだまだ未熟な私としては、こんな拙い恋心は心の奥にしまっておきたい。

「課長の前でだけは女の子なんて、そんな簡単に切り替えられるかな?」

「香奈、その王子のことは怖くないんでしょ?むしろ興味があるんでしょ?」

「うん」

「それは、もう既に切り替えてるってことだと思うけどな。その王子に対して香奈はとっくに女の子なんだよ。だから、今まで通りでいいんじゃない?」

ハッとして目を開いた。そうだったのかな……?

「私、課長に対して女の子、だったの?」

「そーだよ」

「だから、課長も私のこと女の子なんて言ったのかな?」

「んー?いや、違うな。王子にとって、香奈は元々女の子だったんだと思う。王子が現れて香奈にかかってた魔法が解けたから、香奈は王子の前では女の子なんだよ」

「魔法?」

「魔法っていうか、継母の呪い」

「……」

呪いなんて言い方ちょっと怖いけど、ある意味ぴったりの表現かも。
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