ESORA PINK《短》
「はいはい。すみません」

睨み付ける私に八智はそんなことを言いながらロックグラスを渡してくる。

さっきの言葉は本心じゃなくて、私に遊ばれている廉を助けるものだってわかってるけど、それにしてもひどかった。

ロックグラスを受け取っても睨んだままの私に、八智は困ったように笑う。

本当は、困っていないくせに。

「まあ確かに、渉(わたる)はいい男だけどね」

睨み付ける私をかわすように、八智はヤケ酒の原因である男の名前を出す。

そんなことで誤魔化されないと思いつつも、私の頭に浮かんだのは渉の満面の笑み。

その笑顔が浮かんだ瞬間に、荒れていた心がすっと凪いでいってしまった。

こんな心境で八智を睨み続けることなんて不可能だ。

「……当たり前でしょ。私が惚れた男なんだから」

渉の笑顔に免じて誤魔化されてあげよう。
私はウイスキーで喉を潤したあと、胸を張ってそう笑った。
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