○○するお話【中編つめあわせ】


「私は、生贄としてこの街に越してきたんです」
「生贄って……え、吸血鬼のか? でも、人間は吸血鬼の存在は架空のモンだって……」
「ほとんどの人間は架空の魔物だと思ってます。でも、存在を知る人たちもいる。
知るって言っても、もしかしたら程度ですけどね。どんな魔物に差し出される生贄だってそういうものでしょう。
とりあえず差し出しておけば安心程度の事です。ヤマタノオロチとかいい例ですね」
「まぁ、事情は分かったけど……で、なんでおまえはそんな落ち着いてんの?」

再度向けた問いに、少女は淡々とした表情で答える。

「私は小さい頃からいずれ生贄になると言われて育ってきたのに、その時がきたからって今更何を怖がるんですか?」

そう言った少女は、本当に不思議そうにしていて……その表情に、なんだかもやもやとした感情が湧きあがってくる。

今まで何百人、何千人っていう人間の血を吸っておきながらこんな事を言うのもおかしいが。
人間の瞳っていうのは、もっと輝きを持っていた。
牙を見て恐怖におののく瞬間だって、絶望という感情を瞳に目一杯浮かべてキラキラしてたっていうのに……。

どうしてこいつは最初から死んだような目をしている?
輝きは? 感情は? 一体いつ奪われた? 誰に?

見た事もないような綺麗な色した瞳は、出逢ってから今まで一度も感情を浮かべていない事に気付き、またもやもやが増す。
自分でもよく分からない感情が蓄積されていって、心地悪さに眉を寄せた。


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