○○するお話【中編つめあわせ】
「なぁ。おまえ俺に殺されるって分かってんだろ? 分かっててなんで……」
「ああ、もしかしてこの格好がお気に召しませんか?」
不意にそんな事を言い出した少女が、着ている白いパジャマを見下ろし言う。
「吸血鬼は白に赤い血が飛び散るのを好むと言われて、着させられたんですけど。嫌でしたか?」
「いやっつーか……なんかもう、何からツッコめばいいんだか分かんないけど。
おまえは、吸血鬼が好きそうだからってその服着せられてんの?」
「はい。日中は他のものに着替えますけど、それも全部白で首元が開いたつくりのモノを渡されています」
「それを命令してんのは誰だ?」
「……それを知ってどうするんですか?」
少女が初めて見せた瞳の揺れに戸惑いを見て、くそと思う。
恐らく少女は楽しみや嬉しさなどのない絶望のみを教えられこれまで過ごしてきたのに、忠誠心だとかだけはしっかり植え付けられている。
他全部の感情を踏みにじり根っこごとどこかにやっておきながら……更に、抗わないようにと。
たかが人間ごときにこんな風に思うのはどうかとも思うが、もう思ってしまったのだから仕方がない。
どうしても、目の前の貴族の少女が可哀想で仕方がない。
いずれ血はもらうにしても、今この状態の少女からはもらいたくなかった。
この色のない瞳に、感情が宿るところを見てみたい。
俺には長すぎるくらいの時間があるし、いい暇つぶしにもなる。
血なんかその後で十分だ。
こんな話をすれば、またアキラに呆れられんなぁと思いながらも、まぁいいやと苦笑いで片付けた。
この街の吸血鬼は俺とアキラだけ。ならば生贄と差し出された少女をどうしようが俺の勝手だ。