○○するお話【中編つめあわせ】
「なぁ、おまえさ、名前なんて言うの?」
話題を変えて笑うと、少女はまたわずかな戸惑いを浮かべてから口を開く。
「……麗」
「麗ちゃんね。俺はカイジ」
「なんで、自己紹介なんてするんですか?」
「んー。どうせ俺への生贄ならさ、俺がどうしようが勝手だろ? だったら血は後でいいからまずは仲良くなってみない?」
「ね。麗ちゃん」と笑った俺を、麗はぼんやりとした瞳で見て「……はぁ」と頷いた。
〝色のない瞳に、感情が宿るところを見てみたい〟
そう思ったのは……甘さだったのか。
この時の俺はまだ、己の運命を知らずにいた。
「とりあえずさ、そんな格好で廊下なんかウロウロしてたら風邪引くし部屋戻ろっか。
で、今日のところは寝な。部屋まで送ったら俺は今日は帰るから。んで、また明日来る」
「……吸血鬼ってもしかして暇なんですか?」
「……ちょっと返す言葉がない」
――これが。
俺と麗の出逢いだった。