○○するお話【中編つめあわせ】


「血はもうほとんど元に戻ってるし、俺だって自分の身を危険に晒してまで人間に何かしようってほどバカじゃねーし」
「もうしてるようなもんじゃん」
「別に麗のためじゃねーよ。ただ楽しそうだからってだけ。意思操作しておけば俺の事も受け入れるし。
麗んとこ行くたびに悲鳴あげられてたんじゃ面倒だしな」
「……そんなに長い間通う気なの?」

静かな口調で、でも同族の俺でさえ少しぞくっとするような、地を這う声に笑顔を作った。

「気が向かなくなるまでだから、長いか短いかはわかんねーけど。
でも……あいつは俺の獲物だ。おまえは手出すなよ」

わざとピリッとした空気を出した俺を、アキラは観察するように眺めて……それから「元から興味ないし」とこぼし、背中を向ける。
そして、部屋を出る直前、顔だけで俺を振り返った。

「ねぇ、カイ。吸血鬼が必要以上に人間に近づかない理由、分かってるよね?」

アキラが言わんとしている事が分かって、はっと笑った。

「アキラ。吸血鬼様が人間なんかに想いを寄せて滅びたなんていうのは、もうファンタジーの世界の話だろ。
あいつはただの暇つぶしのオモチャだ。俺はそんな愚かじゃない」

そう言った俺を見ていたアキラが「どうかな」と呟くようにして言う。

「吸血鬼にだって感情はあるからね。まぁ、カイが違うって言うんなら、俺はそれでいいけど」

「ただカイは吸血鬼なのに面倒見が良すぎるところがあるから気になっただけ」と残したアキラが部屋を出て行く。

残された言葉に「面倒見ねぇ」と独り言を落としながら、さっきまで広げていた書類を手に取った。

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