○○するお話【中編つめあわせ】



「今日、別の店のにしてみた。麗ちゃんが好きそうな苺のケーキあったから」
「……紅茶、準備してきます。カイジさんはコーヒーでいいですか?」
「うん。あ、でも俺も行くわ。麗ちゃんと一緒に準備する」

「またですか」と嫌そうな声色で言いながらも、その横顔に嫌がっている様子はない。
一ヶ月毎日観察するように見続けた成果なのか、無表情の中に麗の気分を見つけ出せるようになっている自分に気づいてマジかよと笑ったのは十日ほど前だったか。

「相変わらず使用人に頼んだりしないのな」
「自分の事くらい自分の手で足りますし。頼まない限り手を貸す必要はないからって言ってあります」
「ふーん。まぁ、麗ちゃんの好きなようにすればいいけどね」

「使用人サンは感じ悪かったりしない?」と聞くと、麗は紅茶を入れていた手を止め、じろりという視線をこちらに向けた。

「感じはとてもいいです。初日……カイジさんがここに忍び込んだ日はあそこまで好意的ではなかったんですけど、その翌日から人が変わったように親切です」
「へー。ならよかった」
「カイジさん、まさか何かしましたか?」

話すようになってから気付いたけど、麗は頭がいい。そして洞察力もある。
瞳はいつもどこかぼんやりとしてはいるけど、きちんと相手を見ている。
相手の瞳の動き、表情を。

だから、麗の前でつく嘘には気を使う。アキラほどとまではいかなくても、簡単に騙せる相手じゃない。


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