○○するお話【中編つめあわせ】
「えー。なにも。麗ちゃんが何かしてほしいっていうならするけど、吸血鬼だからって何でもできるわけじゃなくてさ。
人の記憶は消せるけど、それ以外をいじったりはできないし」
自然に見えるように笑みを作って嘘をつくと、麗は俺をじっと見つめた後、視線を手元に移した。
「そうなんですか。でも、そうですよね。記憶だとかそういうのは神様の領域ですもんね」
「ですねー」
「カイジさん、お湯湧きました」
「んー。麗ちゃん、カップこっち寄せて」
麗のカップと俺のカップ、それぞれにお湯を注いでいく。
最初は、客用のを使ってたけど、どうもそれじゃ落ち着かねーなとここに置いておくカップを探しに行ったのはここに来るようになって一週間が経った頃。
こだわりもないし適当でいいやと思いながら探してた視線の先に止まったのは、黒と赤のペアのマグカップ。
なんのイラストもついていないそれを手に取ったのは、ただなんとなく気に入ったからってだけだったけれど、それは麗も同じだったようで。
『これプレゼントー』と持ってきた日からずっと、麗はこのマグカップしか使っていない。
俺が来ると、部屋に赤いカップが置いてある事もあるから、俺がいない時もこれを使っているようで、それに気付いた時はニヤけんのが止まんなくて麗に何度も『キモい』と言われた。
「んじゃ、昨日の続きでも話すか。どこまで話したっけ」
マグカップを持って戻った麗の部屋。
丸い天板のテーブルを挟んで座ると、麗がカチャリとフォークを持った。
テーブルの上に乗るのは、紅茶とコーヒー、それと苺の乗ったケーキ。