○○するお話【中編つめあわせ】
「寝ててもいいんですけど、寒くないかなって思って声を掛けたんです」
そう話す麗に「ああ、大丈夫」とだけ声にして、麗の太腿あったかいからと心の中で呟く。
吸血鬼の体温は人間よりも若干低いけれど、多分人間よりも皮膚が厚いせいか、寒さや暑さには耐性がある。
どっかの本では暑さに弱いだとか謳っているらしいが、それも迷信だ。
最近の吸血鬼には弱点なんてものはない。
……恋、以外は。
「夜、眠れないんですか?」
麗が遠慮がちに手を伸ばし、俺の髪に触れ撫でる。
誰かの頭を撫でるなんて慣れないからか、ぎこちない手つきに奥歯がむず痒くなった。
麗は基本的に自分から俺に触れてきたりはしないし、表情だって未だほとんどない。
それでも、例えば俺がテーブルに頭を強打したりだとか、麗を構い倒しすぎて本で殴られた時とか。
痛がったりしていると、たまにこうして撫でてくれたりする。
それは最初嬉しくて、心を開いてくれ始めているのかもしれないなんて風にも考えたけれど。
すぐに吸血鬼の俺が何考えてんだって自分を笑った。
いつまでもこうやって仲良しこよししているわけにはいかない。
俺がもし、こんな気持ちを麗に抱かなければそれはできたかもしれないけれど……と考え、また自分を笑った。
――気付いたら手遅れだった。
そんなものは人間の専売特許だと思っていたのに。
気付いたらもう、色んなもんが手遅れだった。
この〝今〟は間違いなく俺が選んだ結果ではあるけれど……でも。麗と離れなければならない時が近づいている事を思うと、もっと他に道はあったのかもしれないなんて考えだすのだから、やっていられない。
後悔をしたいわけじゃないのに。