○○するお話【中編つめあわせ】
麗に出逢ってからも、他の人間の血を吸えている期間ももちろんあった。
吸えなくなったのなんてここ二週間ほどだから、まだそこまでの貧血……もとい、栄養失調状態もない。
そもそも今の吸血鬼は普通に人間と同じものも食べられるし、アキラに至っては血よりもシリアルの方が好きだとか言うんだから本末転倒みたいなもんを感じる。
けれど。
どれだけ飯が好きだったとしても、それでそれなりの栄養は補えていても。俺たち吸血鬼に人間の生き血は必要不可欠。
どれだけ吸わなければ死ぬだとかそういう事は分からないけれど、恐らく持って一ヶ月とかなんだろうって事は、身体の弱り具合で分かっていた。
勘がよく頭もいいっていうのは、こういう時困りモンだよなーと呑気に考えながら、口元に流れる血を手の甲で拭った。
この二週間、俺だってただ黙って大人しく睡眠不足に耐えていたわけじゃない。
人間なんて溢れるほどいるんだし、誰かしらの血なら吸えるんじゃねーかって、吸える血を求め歩いていた。
人間界の映画みたいに美女じゃなくてもいいし、まぁ、あんまり気は進まねーけど男のでもいい。
誰かしらいるだろ、そんな期待を胸に毎晩街に出て、あれならイケるか?と、牙を立ててみたけれど……。
「今日のもダメだったなー……」
本当に、ただちょっと恋に堕ちたくらいで、こんなに味覚って変わるもんかね、と思わず笑う。
今までも多少の好みはあったものの、割と誰の血でも問題なく味わえていたのに……この二週間に至っては、人間の血が舌に乗るなり、心臓を強く握られたような痛みが身体中を走り抜けるようになっていた。