○○するお話【中編つめあわせ】
吸血行為には、記憶操作がワンセット。
となれば、牙を立てた相手にはわずかだが俺の血を流しこんで記憶操作をし、吸血行為の前後、そして吸血鬼の記憶を消す必要がある。
牙を立てただけで血も吸えてないのに、更には血を奪われる。
人間の血を吸えなくなった俺にはリスクがでかすぎるし、死期を早めるだけなように思えるから、イケそうだと判断した人間にしか牙は立てていない。
最初は、麗と似た身体つきの女。その後は、瞳の色が似た女。そして今日は……麗の髪と色も長さもそっくりな女。
どれも、口にした瞬間に吐き出したくなるほどの激痛を伴うものだった。
若干、貧血気味なのか、それとも寝不足なのか、ヨタヨタと歩きながら屋敷に帰ろうとして……麗に会いたいとは思ったけれど。
こんな血で汚れた身体で麗の部屋に入るなんて許されない気がして、そのまま大人しく屋敷へと戻る事にした。
夜中も夜中の、深夜二時。
さすがにこの時間ともなれば街も暗闇だけに包まれていた。
真っ暗な夜道を歩き、屋敷に入る。このままとりあえず風呂に入って……で、眠れなかったらまた麗のとこでもいくかと考えながら廊下を歩いていて。足をぴたりと止める。
数メートル先にある気配に、ついにバレたかと苦い笑みがもれた。
暗い廊下の先で、底光りする瞳がふたつ俺を見ていた。
「こんな時間におまえが出歩くなんて珍しいな」
なんでもないような声で言うと、アキラは俺をじっと見る。
暗さに目が慣れているからか、アキラの表情が見てとれた。