○○するお話【中編つめあわせ】


前だったら、恭くんは『なんでいいから言えよ。怒らねーから』って私の呑み込んだ言葉を笑いながら拾ってくれたけど……今は。
私が何か話しかけた事にも気づかない様子の恭くんは、ただご飯をお腹に詰め込みながら書類とにらめっこしていた。

ペラって、書類を捲る音だけが食卓に響いていた。

「ごちそうさま」って独り言みたいに言った恭くんが、空になったお皿を持って立ち、シンクの中に置く。
それから、さっき私が置きっぱなしにしておいたコンソメと片栗粉を見つけると。
小さなため息をついた後「閉まっとけよ、こーいうの」と少し苛立った声で言った。

あ、それ……と、思ったけど。
「……ごめんなさい」って謝る。

「片付け苦手なの知ってるから、おまえの部屋までは文句言わねーけどさ、共有スペースはちゃんと綺麗に使えよな」

もう一度ごめんなさいと言うと、恭くんは資料片手に部屋に戻った。
パタンという乾いたドアの音。

目の前にあるのは、まだ半分ほど残っている私の夕飯。喜んでもらえなかった、かぼちゃの煮物。
私が食べ終わるまで待ってくれなくなったのはいつからだったっけと考えたら悲しくなったから、食べる事に集中した。

コンソメと片栗粉は、ダイニングの椅子を使って吊り戸にしまった。

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