○○するお話【中編つめあわせ】


「だから忠告したのに」

俺たち吸血鬼は、相手の状態が感覚で分かる。俺とアキラはかなり長い間ずっと一緒だったから余計に。
俺が今どんな状態なのかは、こうして気配を探り合える距離にいれば手に取るように分かるハズだ。

だから変な言い訳はせず、「悪い」とだけ答えた。
正直、言ってから何が悪いんだよとも思ったけど。ただ麗を好きになっただけなのに、それの何が悪いんだよっていう、八つ当たりみたいな思いも浮かんだけど。
それはアキラに言う事じゃない。

「もう、そうなったら遅いの?」
「……多分な。調べてみたけど、過去のどの報告書も人間に恋した哀れな吸血鬼のどうの~っとか書いてあって頭にきたから結局ちゃんと読めてねーけど。
ページ飛ばして最後だけ見たら、全員」

アキラが顔をしかめ、視線を伏せる。
まるで、初めて会った時みたいな心細そうな表情に、懐かしくてふはっと笑った。

「そんな顔すんなって。俺がいなくなったらおまえはルイのところで面倒見てもらえるように話はつけてあるから。
ふたつ隣の街だし、雰囲気はこことそんなに変わらない」
「……そんなになってるのに俺の心配してるなんて馬鹿じゃないの」
「まぁな。面倒見がいいから、放っておけなくてね」
「ルイさんは、なんて?」

チラリと視線を上げて聞くアキラに、目を伏せて言う。

「多分怒ってたけど。分かった、ってそれだけだった」
「……そう」

「カイは、どうするの?」と聞いたアキラに少し黙り……窓から見える満月を眺めた。
麗と出逢った日も満月だったから、あれから数えて三回目の丸い月だった。


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