○○するお話【中編つめあわせ】




もう第二の我が家のような感覚で入った麗の屋敷。
温かい日差しが降り注ぐ二階の廊下。一番奥の突き当りの部屋。通い慣れたその部屋のドアをコココンとノックして開けると、麗がハッとした表情を向けた。
いつもなら大体、ゴミでも見るような目つきで見られるのに珍しい。

そう考えてから、昨日の別れ際を思いだし、あーと思った。

昨日はやけに身体が血に焦がれていて、麗と一緒にいる事に限界を感じ、挨拶もそこそこに突然部屋を出た。
何か話した気もするけど多分、〝ちょっと急用〟とかそんな事だけ言い残し、麗の返事も待たずに背中を向けてしまった。

正直に白状すれば、今までだって似たような事はあった。
でも、もっと上手に麗を騙せていたのに……昨日は嘘さえうまくつけなかった。
そしてそれを自分でも分かっていたのに、フォローもできずにそのまま……。

いくら麗を傷つけないためとは言え、あんな態度は初めてとったし、それで麗を別の意味で傷つけてしまったのかと思うと申し訳なくなる。

傷つけたいんじゃなく、守りたいだけなのに。こんな身体のせいで上手くいかない。
もうきっと……麗と過ごせる時間は、あとわずかなのに。

ふと人間の血を吸えなくなってからどれくらい経っただろうと考え、一ヶ月が過ぎようとしている事に気付く。
自制が利かなくなるのも、視界がかすむのも足元がふらつくのも、当然だった。


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