○○するお話【中編つめあわせ】
恋に堕ちた吸血鬼の末路をまとめた報告書。
最後に記されていたのは、吸血鬼の生死と、その吸血鬼が恋に堕ちた人間の生死。
前者は言うまでもなく、だったが……後者は、半分だけだった。
つまり恋に堕ちた吸血鬼は己の本能を縛り付け、最後まで相手を傷つけなかったという事で。
それを読んだ時、ああ、よかったと思った。俺もきっと、麗を傷つけずに済むと。想いのでかさなら、あの本に載っていたどの吸血鬼よりも自信があったから。
あの本の中にいた吸血鬼で、とても微笑みともとれないような口元の歪みだけで至福を感じたヤツなんていなかったから。
麗のわずかな口元の緩み、瞳の輝き、声の弾み。そんな些細な事でかみしめるほどの幸せを感じる俺の勝ちだ。ざまーみろ。
だから。俺には麗を守れる。
まるで自分に言い聞かせるようにそう思い、笑顔を浮かべた。
「昨日はごめんね。麗ちゃん。ちょっと用事思い出して」
軽く聞こえるように言い、へらっと笑って部屋に入る。
麗は椅子に座り何か読んでいたようで、その本をテーブルにそっと置いてから俺を見た。
「いえ。突然だったので驚きましたが……別に」
「そ? 怒らせちゃったかなーと思ってたから違うんならよかった」
「ただ、本当は用事じゃなくて、体調が悪いんじゃないかって。それが気になったんですけど」
そこまで言った麗が、立ち上がり、俺の目の前まで歩いてくる。
そしてじっと探るように見上げ「私の勘違いではなさそうですね」と言った。