○○するお話【中編つめあわせ】
見下ろすと、細い腕が俺の身体に巻きついていて……恐る恐る振り向けば、背中に抱きつく麗の頭が視界に入る。
驚きや嬉しさみたいなもんと同時に、また湧き上がる吸血本能が内側から刺すような痛みを発していた。
「麗ちゃ……」
「私の血を飲んでください」
「……麗ちゃん、本当に今は、俺……」
「私の血を、飲んでください」
俺が力の入らない手でなんとか剥がそうとしている麗の腕が、力いっぱいに俺を抱き締める。
背中に感じる、俺よりも少し体温の高い身体に、目の前がクラクラしていた。
麗の吐息にさえ、吸血本能が惑わされ誘われ……喉がカラカラに乾いていた。
「カイジさんが最近おかしいのは分かってます。多分、血が足りてないんだろうなっていう事も……。
それがなんでなのかは知りませんが……でも、だったら私の血を吸えばいいじゃないですか」
「……それは、無理だな」
「私は……カイジさんのおかげで、色んな感情を知りました。嬉しいとか楽しいとか……知らなかったものを、カイジさんはたくさん教えてくれた。
なんで、素直な態度が取れないんだろう、とか、コーヒーをおいしく入れられたら喜んでくれるかな、とか……そういう面倒くさい気持ちまで」
「……麗ちゃん、手、離して」
「カイジさんは勝手です。私に与えるだけ与えておいて、私からは何一つ受け取ってくれない。
そんなの、勝手です」
言葉に交じる声の揺れは涙なのか。
背中に頭を押し付けるようにしている麗の顔は見えないけど……そんな気がした。