○○するお話【中編つめあわせ】
ああ、十分じゃねーかと思う。
感情なんかなくしてた麗が、俺を想ってこんなに声荒げて、多分涙まで溢れさせてる。想ってくれてる。
笑顔じゃないのは残念だけど。
俺は、この麗との思い出を抱いて永遠の眠りにつけるなら幸せだ。
「麗、離せ」
威嚇するようにわざと冷たい声を出し、麗がびくりと肩を揺らした隙をついて、麗の腕をはがす。
少し強引に振り払った腕を……麗がどう感じ、どんな顔をしているのか考えてはみたけれど。
頭に浮かぶのはどれもこれも抱き締めてやりたくなるような顔ばっかだったから、考えるのをやめた。
俺だって、何度も振り払ってやれるわけじゃない。だから。
「麗、幸せに……」
幸せになれよ、なんて。ありふれた言葉を残そうとして止める。
幸せになって欲しいのは本当だけど。この世の誰よりも幸せになって欲しいけど。
俺が優しさを残せばきっと、麗の心にはきっとより深く傷が残る。
一緒にいてやれないなら、そうすべきじゃない。
「やっぱ、いいや。ばいばい、麗ちゃん」
麗が何かを言おうとして震える息を吸い込んだのが分かり、それを聞く前にドアを閉めた。
そして、麗が追ってくる前に廊下の窓から屋敷を出る。