○○するお話【中編つめあわせ】
私が生贄として育てられた事。今着ているパジャマの事。
でもそのうちに、私を育ててくれた大人の事を聞かれて思わず答えに詰まった。
名前を言えば、この吸血鬼はそこに向かうのかもしれない。それは避けたかった。
私がきちんと生贄として役目を終えなかったと知ったらどうなるか。考えただけで怖かった。
あの大人の言う事は絶対で、守れないなんて事は許されない。
だからはぐらかした私を、吸血鬼はじっと見つめて少し眉を歪めてから質問を変えた。
「なぁ、おまえさ、名前なんて言うの?」
随分重さの変わった質問に、なんで名前なんかと思いながらも答えると。
「麗ちゃんね。俺はカイジ」
吸血鬼はそう笑った。
よく分からないけれど、この吸血鬼はすぐに私の血を吸うつもりはないらしい。
「とりあえずさ、そんな格好で廊下なんかウロウロしてたら風邪引くし部屋戻ろっか。
で、今日のところは寝な。部屋まで送ったら俺は今日は帰るから。んで、また明日来る」
「……吸血鬼ってもしかして暇なんですか?」
「……ちょっと返す言葉がない」
歩く度にパタパタとなびくマントを眺めながら、その日は部屋に戻った。
これが、私とカイジさんの出逢いだった。