○○するお話【中編つめあわせ】
その日を境に毎日私の部屋に来るようになったカイジさんは、あまり吸血鬼という感じはしない。
陽気でふざけていて軽い。
最初の一週間くらいは、一緒にいても落ち着かなかったのが正直なところだけれど、慣れてしまえばどうという事もなかった。
恐らく、包容力があるのだと思う。
私は、自らの存在を許されるような感覚も、何をしても許してもらえるような甘えも、ふたりで入れるお茶のおいしさも、苺の乗ったケーキのおいしさも。
全部、カイジさんに教わった。
何か望みはないのかという質問に、特にないと答えてから……ああそういえば、とベッドが固いという話をしたら。
その翌日にはふわふわのモノに変えられていて。
いつの間にか、お客様用しかなかったカップが、お揃いのマグカップに変わって。最初はきちんとしていたノックが〝コココン〟という、カイジさんの性格みたいに軽く明るいものに変わった。
部屋の窓にかかっていたハズの鍵がいつの間にか外されていた事に気付き、初めて窓を開けたのは、カイジさんと出逢って十日ほどが経った頃だったと思う。
穏やかな風にさわさわと揺れる葉っぱ越しに抜けていく空気に世界が色づいて見えた。
私は別に、自分の運命を呪ったりだとかした事はない。
育った環境なのか元からの性格なのかは分からないけれど、仕方ないという理由で片づけられていたから。
だからあの時、カイジさんと初めて出逢った夜、例えあそこで血を吸われ命を落としていたとしても後悔などはなかったんだろうと思う。