○○するお話【中編つめあわせ】
続けたかった言葉が途切れたのは、半分気付いてしまった答えを言葉にして聞きたくなかったからかもしれない。
答えを待たずに溢れ出した涙が頬を伝い、ベッドにぽたりと落ちる。
それを見たアキラさんは少し驚いたように目を開いた後、「涙……出るようになったんだ」と呟いた。
「麗は小さい頃感情を奪われちゃったから、それを俺が思い出させてやろうと思ってって、カイが言ってたから」
そこまで言ったアキラさんは黙ってうつむいて……それからふっと口元に笑みを浮かべた。
「仕方ない男だよね。多分、カイは麗を笑わせたかったのに。嬉しいとか、楽しいとか、そういうのを思い出させてあげたくていたくせに。
カイのせいで泣かせるなんて」
アキラさんが気まずそうな顔をして私を見る。
「……ごめん。俺、こういう話苦手だし……なんて伝えるのが一番いいのか、少し考えてはみたけど。多分、どんな言葉で伝えても、麗を傷つけると思う」
そこから先、アキラさんが話してくれた事を、私は相槌も打てずにただ涙を流しながら聞いていた。
カイジさんの気配が消えている事。
捜索したけれど身体が見つからない事。
私を育てた大人なら、カイジさんが人格を変えてくれたからもし帰っても私を好意的に迎え入れてくれるから安心していいって事。
警備の人ももういない事。
私はもう自由で、この屋敷にいる必要もなくて……その自由は、カイジさんが用意していってくれた事。
カイジさんとアキラさんが住んでいた屋敷は、もう買い手がついているらしく、その金額が私宛に郵送される事。
子どもの頃から生贄としてしか育てられてこなかった私には学がない。だから多分、きちんと働くのは難しいだろうと心配したカイジさんの配慮だと、アキラさんに聞いた。
一生遊んで暮らせるよって。