○○するお話【中編つめあわせ】
「本屋さんまで行ってきます」
使用人さんに言うと、ついて行きましょうかとか代わりに行きますよと声をかけられたけれど、大丈夫だからと断った。
私ももう子供って歳でもないからひとりの外出くらい平気なのに、心配性すぎる部分はカイジさんの影を感じた。
二十分ほど歩いた場所にある本屋さんに入り、欲しかった参考書を一冊手に取る。
他に欲しいモノもないから会計をすまし、紙袋に入れられた参考書を胸の前に抱きお店を出ると……ふわっとした風が髪をすくった。
なんてことのない、ただの風。
それなのになぜだか無性に懐かしくなってしまって……愛しさがこみ上げてきてしまって。しまいにはじわりと目尻に浮かんだ涙に気付き、足早に歩く。
そのまま少し歩いて、歩道の端にあるベンチに腰を下ろして気持ちを落ち着かせた。
なんでこんな無性に恋しくなってしまうのか理解ができない。
けれど、考えてみればカイジさんにたいする想いで理解できる事の方が少ないのだから、まぁ、そういうものなのかと変な理屈で片づける。
でも、だって、そうだ。
あんなふざけていて軽薄そうで、勝手な人なのに、カイジさんにおいしいコーヒーを入れてあげたいだとか、そんな事を思い始めた時点でもうおかしかった。
誰かに何かをしてあげたいなんて、カイジさんに出逢うまで思った事さえなかったのに、カイジさんを見ているとしてあげたい事が溢れてきて、でも素直にしてあげられなくて。
そういうジレンマだって、よく理解できないし、カイジさんがいなくなったってだけなのにあそこまで何も見えなくなってしまった自分だって、理解できない。
もう、半年以上も経つのに、未だにカイジさんの姿を追い求めてしまう自分だって……理解できない。