○○するお話【中編つめあわせ】


「だから、このまままた吸血鬼に転生させんのは吸血鬼の格を下げる事になるから人間になれって」
「人間……」
「まぁ、早い話が降格だってさ。なんか、普通は誰かの腹ん中いる状態から始めるらしいけど……俺は身体も綺麗に残ってるし」

「特別だってさ」と言い笑ったカイジさんが、私を見る目を細める。

「俺の事は割とどうでもよさそうだったけど、麗は可哀想な人生だったから、これからの麗の未来に俺がいた方がどうやら麗は幸せなんだろうって。
それを、すげー納得いかなげに言ってた」

こんな、都合のいい話があるんだろうか。

一度は命を落としたのに、それを神様に笑われて滑稽だったってバカにされて、今度はそのまま人間になれだなんて……そんなバカげていて嬉しい話が本当にある……?

私は、生まれたお国柄どちらかといえばキリスト教徒だけれど、神の存在を心の底から信じていたわけではない。
死んだ後の世界なんて死んだ人にしか分からないのだから、本当に神が存在するかどうかなんて誰にも分からないハズだ。

なのに、一度死後の世界を見て戻ってくるなんて……。カイジさんの話を聞いたところで、どうやったら信じられるのか分からなかった。

「魂を吸血鬼から人間に変えるのに半年かかるっつーからすぐやってくれって頼み込んだ。
俺は記憶はそのままでいいから、魂の道変えるだけだしまぁいいだろうって……それで今朝全部終わって、目が覚めたらこの街に立ってた。
目を開けた瞬間、目の前を真っ白な風が吹き抜けて行って、なんとなくそっちの方向を見たら」

「麗がいた」

微笑むカイジさんに、本屋さんを出た瞬間に感じたふわりとした風を思い出した。
その風を感じた瞬間、急にカイジさんが恋しくなって……それで、このベンチに腰を下ろした事を。


< 149 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop