○○するお話【中編つめあわせ】


「本当に……カイジさん、ですか……?」

じわりと浮かんだ涙を感じながらも真っ直ぐに見て聞くと、カイジさんはふっと笑う。

「本当にカイジさんですけど。あー、でも今は人間だけどな」
「本当に……? 私が、恋しさを募らせて作り上げた幻とかじゃなくて?」

私の言葉に驚き目を見開いたカイジさんが「麗……」と呟くように呼ぶ。

「だって、本当に会いたいって……カイジさんに会いたいって、ずっと、ずっと私……っ、だから――」

ついに瞳から溢れ出した涙が頬を伝ってポタポタとベンチに落ちる。
それを見たカイジさんは、ツラそうに顔を歪め……そして、なんとか笑った。

「……うん。ごめん、麗。信じられないなら、麗が信じられるまで何度だって説明するし、信じられるように何だってする。
だから……今は抱き締めさせてくれない?」

「え……」と声をもらすと、カイジさんが笑う。その目元はまだ、ツラさに歪んでいた。
その表情に、きゅっと胸が締め付けられ……途端にじわじわと実感みたいなものが広がっていった。

「最後にさ、麗が抱きついてくれたのに……抱き締めかえせなかったから。それがずっと、死んでからも心残りだった」

ツラくても、どんなに苦しくても私には必死に笑ってくれる。
それは私が最後に見たカイジさんで……私がよく知っている、本当のカイジさんだ。

ボロボロと大きな粒となった涙が次から次へと溢れるから、両手で顔全部を覆うようにして俯くと。
カイジさんが伸ばした手で抱き寄せるから、慌ててカイジさんの胸を押した。

近づいた距離に、触れ合った部分に、ただ嬉しさに震えていた胸に一気に不安が湧きあがる。


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