○○するお話【中編つめあわせ】


「俺はおまえが好きだし、おまえに構ってなかった間だって、仕事に必死だっただけでおまえ以外の女に目を向けた事なんか一度もねーよ。
これからだって、俺はおまえ以外……」
「だったらなんで……っ」

急に叫ぶように言った凛が、俺にドンとぶつかる。
驚く間もなく、しがみつくように胸に張り付いた凛に、ドン、と強く叩かれた。

思いきり俯かせた顔。
俺の胸にくっついてる頭。

握られた震える拳が……もう一度、ドンと胸を叩いた。
泣いてるのが、見ないでも分かった。

強く握りすぎた拳には白く骨が浮き上がっていた。

「だったらなんで……っ? なんで……私に、笑ってくれないの……」

掠れた声と言葉の意味に胸を打たれて、こっちまで泣きそうになる。

最後に笑った凛を見たのは、いつだったか。
凛が出て行ってからそう考えた事もあったけど……俺自身も笑ってなかったのかって、今の凛の言葉で気づいた。

ああ、だからこいつは笑わなくなったんだって。
俺が笑わなくなったから、だから凛は……って、今更過ぎる事に気付いて、情けなさだとか悔しさだとか、ひとつにはとてもじゃねーけどまとめられない感情に、ぐっと喉のあたりを圧迫され苦しさが増した。

ドンッ、ドンッ……と凛が俺を叩く。
細くて小柄な凛の力なんてたかが知れてるのに……叩かれる度に、鋭い痛みが身体中に広がった。

心臓にダイレクトに届く苦しさに、喉の奥が熱くて痛い。


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