○○するお話【中編つめあわせ】


一歩後ずさろうとした私の背中を、恭くんの手が押さえて止める。
そして、俯いたままの私の顎をくいって持ち上げると、もう一度唇を合わせた。

嫌じゃない。嫌なわけじゃないけど……。
なんとなく、まだどこかにあるわだかまりの名残のせいか、素直にキスを受け入れている事もできなくて逃げるように座り込むと、恭くんもそれを追うようにして目の前にしゃがんだ。

恋人の距離が恥ずかしくて目が泳ぐ。顔が熱い。

「口、開けて」
「や、だ」
「んー?」

優しい催促に首を振ると、親指で強引に開かされた。
唇を割って入り込んできた恭くんの親指が歯と歯の間にあるから、口が閉じられない。

そのままぐって押し倒されて驚いて見上げると……上から恭くんが見下ろしていた。
口元に浮かぶ笑みが意地悪だ。

「嫌なのに咬まねーの?」

ふって笑いながら聞かれて、恥ずかしくなって目を伏せる。

本当は好きだって、嫌じゃないって分かってるくせに。

意地の悪い恭くんに反撃してやりたくて、口の中にある親指を軽く咬んでみたけど。
恭くんは驚くどころか、優しく笑って私を見ていた。

ちょっとは痛いハズなのに。


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