○○するお話【中編つめあわせ】
「こんばんはー。なんか急にごめんね。で……あのさ、俺が誰だか分かる?」
もしかしたら、貴族だから、他の人間と認識の仕方が違うのかもしれない。貴族はもしかしたら架空の世界なんて作り出さないのかもしれない。
そう思い、カッコ悪いが自ら自己紹介してみようかと手さぐりに聞いてみると。
「この状況で分からない人間なんているんですか?」
「え、じゃあ分かんの?」
「吸血鬼でしょう?」
「マントとか、本当にしてるんですね」と、返ってきて拍子抜けする。
しかも、淡々と言うもんだから余計に。
「マントはまぁ、オプションっつーか。正直今日初めてつけたんだけど意外と重くてびっくりしてる」
それにしても、と少女を再度眺める。あまりに白すぎはしないかと。
月明かりを浴びている状態だから余計そう見えるだけかもしれないが……それにしたって、と思わず心配になるほどにその肌は白く輝いていた。
後ろ頭をかいてから、本題へと移る。
「あのさ、俺、君が言う通り吸血鬼なんだけど……なんで君は怖がんないの? ぶっちゃけ怖がってくれないと張り合いがないっていうか、やりにくいっていうか」
「そんなのそちらの勝手でしょう」
「それはそうだけどさぁ……えー、だって普通怖がるでしょ? 吸血鬼となんかこんなバッタリ出くわしちゃったら」
こんな風に目を真っ直ぐに合わせながら人間と会話するなんてどれくらいぶりだろうと思う。
髪と同じ色した無表情な瞳は、怯える様子もなく俺を捕えていた。綺麗な瞳に見入る。