二度目の恋の、始め方
「おい美月。もう行かねぇとヤバいんじゃねぇの」
「あ。ほんと~。じゃね、リンちゃん」
雄大の言葉に、慌てて私から離れる白美月ちゃん。そのまま私の目の前を通り過ぎようとする雄大の腕を咄嗟に掴むと、視線だけコッチを向けた彼に、必死で言葉を探す。
ずっと会いたかった彼が至近距離に居る。こうして視線が絡む日がくるなんて夢にも思わなかった。
「……あの。この間はありがとう」
「お前、勝手に帰んじゃねぇよ。いきなり居なくなったら心配すんだろが」
「ごめん。学校に遅刻出来ないの」
「体調は治ったのか?」
「うん。雄大のお粥が効いたんだよ」
「……お前なぁ。……まぁ良いよ。あんまり無理しすぎて、ぶっ倒れんなよ」
少し笑ったように見えた雄大は、そのまま美月ちゃんと別棟の方へ歩いて行った。普通科とSクラスの境界線。渡り廊下を挟んで向こう側の校舎は、普通科の生徒が行き来できない特別な場所で、周りの色めき立つ女子達は諦めて自分の教室へ帰るんだ。
「……い、ま……笑った……?」
どきん、どきんって高鳴る心臓の音は彼に気付かれていないかな?その場から一歩たりとも動けない私は小さくなる雄大の背中から目が離せないでいた。彼が私に笑いかけるなんて、絶対有り得ないのに。
…………そう、絶対に。