二度目の恋の、始め方

episode、1



「川嶋の事、好きなんだけど」


一年半前のあの日は大寒で雪がチラついていたような記憶がある。呼び出された放課後の体育館。全学年テスト中のため部活動はお休みなはずなのに、当時バスケ部のエースだった彼はどうしてか学ラン姿でバスケットボールを持っていた。

「でも……み、宮路くん。私たち喋ったこと無いのに、どうして?」

「………ヒト目惚れ」

「えぇ!?」

その時すでに女子の人気を不動のモノにしていた雄大は、頭もスゴく良くて、中二で強豪のバスケ部エースに選ばれるほどのスポーツ万能。誰もが憧れる存在の彼が、何の取り柄もない私に一目惚れしたなんて。

「嘘だもん」

「あ?」

「絶対嘘だよ。じゃなきゃ人違いだと思う」

セーラー服の裾をぎゅっと握って、精一杯絞り出した声が誰も居ない体育館に響く。機嫌良くボールを転がしていた雄大の綺麗な顔は、みるみるうちに歪んでいて。

「二年三組。出席番号7番、川嶋凛。2月28日生まれの魚座。血液型はO。身長151センチ、体重は……」

「わゎ、ストップ!」

「理玖情報。人違いじゃねぇし」

そう言ってニヤリと意地悪く笑った雄大に、私はすでに魅了されていたんだと思う。
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