二度目の恋の、始め方

それでも相手はあの雲の上の存在、宮路雄大クン。私と彼が……なんて想像も出来なくて。

「………あの、」

「俺、意外とせっかちな性格なんだよ。決めかねてんなら、アレで勝敗つけようぜ」

そう言って雄大が指さしたのは床に転がるバスケットボール。意味が分からずに首を傾けると、雄大は片手でボールを拾い上げて器用に人差し指でクルクル回す。

「え?何?私、バスケット出来ないよ」

「違ぇよ。ここから、俺の投げるボールがあそこのリングに入ったら俺の勝ち。入んなかったらお前の勝ち。どう?」

「ここからって、そんなの無理……」

「へぇ。じゃあ決まりってことで。約束はゼッテェ守れよな」

こからバスケットリングまではかなりの距離。いくらバスケが上手い雄大でもさすがにこの距離は無理だと思う。
それなのに雄大の表情は余裕すら伺えて、両手でボールを頭上に掲げ、綺麗なホームでリングにボールが吸い込まれた瞬間、私は歓喜の悲鳴を上げた。


「……入った。入ったよ!すごいね宮路くん!」


何故だか、賭けを忘れて負けたのに喜んでいる私を見て、雄大が安心したように微笑んだのを今でも覚えてる。







< 41 / 130 >

この作品をシェア

pagetop