二度目の恋の、始め方

「保健室行った方が良いんじゃない?」そう言って心配してくれているきょんに「平気だよ、いつもの貧血」と満面の笑顔で返すと、渋々納得してくれた。

「行こ……」

「ねぇ~ねぇ~、りんりん!」

いきなり大声で呼ばれた自分の名前。開放された窓の外を見れば、屋上から大きく手を振っている男子生徒が嫌でも視界に飛び込んでくる。ガラス越しの私は無意識に眉間にシワが寄っていた。

「え?ちょっと凛、楠木理玖と知り合いなの?」

「……同じ中学だもん」

「ええ!ちょっと何で教えてくれなかったの?ていうか手振ってるよ、ほらほら」

「目立つからいいよ、もぅ」

私の腕を取って、興奮気味に屋上の人物に答えようとするきょん。なかば強引に手を振り返せば、楠木理玖は可愛らしい笑顔を浮かべ、それを見たきょんが小さく歓喜の悲鳴を上げた。

特進Sクラス。名門英高校の中でも、選ばれた生徒しか入れないエリートクラス。お近付きになれる機会は滅多にないんだもんね。
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