本気の恋をしようじゃないか《加筆修正版》
私たちはタクシーを拾うため大きな道へと移動した。
ふと小牧君の首に巻かれたマフラーを見る。
かなり使い込んだ感があった。
「小牧くんそのマフラー」
私が話しかけると小牧君はマフラーの裾を手に取る。
「このマフラー?」
「うん。まさか今だに持っているとは思わなくて」
上目使いで小牧君をみると、彼はマフラーをじっと見つめた。
「これ巻いてると杏奈とまだ繋がってるんじゃないかって勝手に思ってずっと愛用してた」
どうしよう急にドキドキしてきた。
と同時にこれを作ってる時の自分を思い出した。
編んでは首に巻いて短くないか、長くないか確認したり小牧君の事ばかり思いながらせっせと編んだ。
でもこんなのもらっても迷惑なんじゃないかって不安になったり……

使い古した感のあるマフラーを今だに大事に使ってく入れている姿を見て、小牧君はずっと私の事を思っていてくれたことを実感する。
それに引き換え私はずっと小牧君の事を恨んでた。
心の狭かった自分が情けなくて目頭が熱くなる。
「杏奈?どうした?」
私の顔を覗き込む小牧君に私は顔を背けてしまった。
「私、小牧君の事ずっと恨んでた。勝手に裏切られたって思いこんで、この10年間ずっと」
「仕方ないよ、城田との現場見ちゃったらさ普通は勘違いするよ」
優しいところも全然変わってない。
「でも小牧君だって私と辻先生を見て誤解したんでしょ?。」
小牧君は少し考える様に空を仰ぎ、そのまま視線を私に戻した。
「う~~ん。そりゃ~悔しかったよ。だって相手が俺のよく知ってる人だったしね。 杏奈は知ってたかわかんないけど、つっちーって本当に女子にも人気あったから、俺みたいな男よりつっちーみたいに大人の男の方がやっぱ魅力的なのかなーとかさ。いろいろ考えたよ。だからさ~どちらかと言うと杏奈を恨むと言うよりはつっちーみたいな大人の男になって杏奈が俺から去った事を後悔させたいって気持ちの方が
正直大きかった」
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