ヒカリ
「泉水には…分かるんだよね?」

泉水は苦笑した。
それが答えだった。

「でも、そんな目に見えないものをよく信じられるよね。脳って痛みや悲しみにも慣れるんだよ。好きって気持ちもいつかなくなるでしょ?いつか消えていくでしょ。そんなあやふやなものを、どうしてそんなに信じられるのかな。」

最後の方は、呟くみたいになった。
独り言みたいに、小さく頼りなく、静かな車両の中を漂う。

「なくならないよ。」

きっぱりと泉水は言う。

「目には見えないけど、誰かを好きな気持ちは消えたりしない。なくなりもしない。小さくなることはあると思う。だけど、跡形もなく消えたりしない。」

「そうなの?」

「うん。」

「証明できる?」

「出来るよ。」

「じゃあ、やって。」

泉水は顔を覆って笑い出した。
泉水の小刻みに揺れる背中を見つめながら、

「なんで笑うの!?」

と聞いても、泉水はまだ笑っている。

しばらく、泉水はそのまま笑っていた。
ようやく笑いが止まったのか、体を起こした泉水は、ごめん、と謝った。

「ごめん。恵玲奈が無茶なこと言うから。」


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