さちこのどんぐり
◆どんぐりと男の子
まだ寒さが残る3月に
後に「さちこ」と呼ばれる白い子猫は生まれました。

しばらくして、
神戸の三ノ宮にある小さなペットショップのガラス張りのケースのなかで、
そのシロねこは飼い主が決まるのを待っていました。

「きゃーかわいいー」
店に来たお客さんは、まだ小さいシロねこを見て叫びます。

「うるさいにゃ…」

ある日、その店を訪れた60歳くらいの夫婦が、シロねこの前で立ち止まります。
「あなた、この子にしません?」

「うん…」

「この子がいいわ。本当にかわいい」

シロねこは、その夫婦の家で飼われることになりました。

夫婦は大変可愛がってくれて、シロねこにとって一番幸せな時期だったかもしれません。

「あなたに名前をつけなくちゃね」
奥さんは悩みます。

ご主人は
「白いから『シロ』がいいんじゃないか?」

「そのまんまなのにゃ」
シロねこはその名前は嫌だなと思ってると

「それじゃあ犬みたいよ。
この子には幸せになってほしいから幸せな子で『さちこ』にしましょう。」

< 145 / 163 >

この作品をシェア

pagetop