さちこのどんぐり

~浩二と結衣

これまで知らなかったオムライスの秘密を聞いて、泣いてしまった結衣は
鏡で顔をチェックしてから

「おじさん、今日はありがとう。私そろそろ帰るね」

そう言ってソファから立ち上がった。

「もう少しここに居なよ。じき浩二も帰ってくるはずだから」

(だから帰りたいんだ。いま浩二に会わせる顔がない。)

結衣は心の中で、そう言いながら

「いえ、帰らないといけないんです。私…」
そう言って玄関に向かった。

「本当にありがとうございました。」

「浩二を頼むね。至らないところがあったら、おじさんから言ってやるから」





玄関を出て、エレベータで1階に下りる。
今にも浩二が帰ってきそうで結衣はドキドキしていた。
1階についてエレベータの扉が開く。

セーフ!

マンションのエントランスには誰もいなかった。
しかし、結衣がそこから外に出ようとしたときだった。



!!!!!


「結衣…」
ちょうど学校から帰って来た浩二が立っていた。

「どうして…」そう言いかけた浩二に、慌てた結衣は

「誤解しないでね!
たまたま同じマンションにいる友達のところに行って来ただけよ」

「そうだったのか…」浩二はそう言ったあと、

「結衣、昨日は言えなかったけど、いろいろごめんな。」

「別に…もういいよ」結衣はそれしか言えない。

少しの沈黙のあと、浩二は振り返って結衣に背中を向けるとエレベータのほうへ歩いて行った。

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