さちこのどんぐり
そのとき

「ごめんなさい!」

結衣が浩二の背中に叫んだ。

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」



結衣に背中を向けたまま固まっている浩二に結衣は続けた。

「浩二が好きです。大好きです。大好きです」

結衣は泣き出してしまって、
それしか言えなかった。でも、それを言いたかった。

「昨日は私がいけなかったの!あんなこと言ったけど、本当はそんなこと全然思ってなくて、だから浩二に会えなくなるなんて嫌だよ。」

振り返った浩二は、きょとんとした顔をしてたかと思ったら

「ええええええええ!」

って大きな声だして、その場でしゃがみこんでしまった。




「じゃあ…俺のこと許してくれるんか?」

「うん…」

「これからも俺と付き合ってくれるんか?」

「うん…」

「俺、これからも結衣に会えるんやな…そっかぁ…」
そう言いながら浩二はしゃがみこんだまま




「よかったぁぁぁぁ!」って言ってくれた。





ああ、やっぱり私はこのひとが好きだ




浩二は立ち上がって、結衣に寄り添った。
それから、2人で公園に行くと、また、いつものシロネコがいた。

「にやー」

ネコも2人の仲直りを喜んでくれているようだった。

二人は一緒にベンチに座って、いっぱい話して、いっぱい笑って、
そして帰るとき、

「浩二、また明日ね」そう言った結衣に

「おう!」

暗くなりかけている歩道を、
背中を向けたまま、歩き出した浩二は道の脇に立ってた標識のポールを

カン・カン・カン・カン・カン

5回鳴らしてくれた。





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