さちこのどんぐり
◆プロポーズ
吉田克弥と彼の妻である舞子は結婚して40年。
職場で知り合った。
何度かデートを重ねた後に
二人で行った公園の大きな池のほとりで吉田が舞子にプロポーズをしたとき
「結婚してください」
緊張しながらプロポーズした吉田に、舞子はいたずらっぽく
「えー指輪は?大きい宝石がついた指輪」
当時、苦学して大学を卒業し、まだ社会人になったばかりの吉田に
そんなお金がないことなど知っていた舞子にとって
宝石のことなんか、実はどうでも良かったんだが、
でも照れ臭くて、つい、そんな言葉が口から出てしまったのだ。
吉田は一瞬言葉を失ったあとに
たまたま足元にあった「どんぐり」を拾い上げると
「いつか、これっくらいの宝石の付いた指輪を必ず、きっと贈ります」
舞子はにっこり笑って、ひとこと
「宜しくお願いします」と答えた。